日本でバブル崩壊といえば、1980年代のバブルが平成初期に崩壊した出来事を思い浮かべます。その日本のバブルからさかのぼることおよそ350年前、歴史に名を残す最も古いバブルが崩壊する事件がありました。それが、17世紀にオランダで起きたチューリップ・バブルです。21世紀の現在でも風車とチューリップ畑で知られるこの国で起きたバブルは、不動産などではなくなんと植物をめぐるものでした。
チューリップによるバブルの過熱と崩壊
チューリップとは
チューリップは中東が原産の植物で、観賞用として多くの国で高い人気があります。オランダの国花であるほか、イラン・アフガニスタン・トルコ・ハンガリーの国花でもあります。日本には江戸時代に伝来したとされ、新潟県・富山県が主な生産地であり、両県の県花にもなっています。品種改良が重ねられ、たくさんの種類があります。
この花がオランダにもたらされたことでチューリップ・バブルが引き起こされました。
チューリップ取引が大ブームに
オスマン帝国からオランダに伝わったチューリップは、その美しさから人気を集めました。はじめは植物愛好家や植物学者が売り買いするだけでしたが、しだいに珍しい品種を所有することがブームになりました。特に、希少性の高い品種は高値で取引されるようになります。そこに投機家が目をつけ、大きな利益を得る人が現れます。
するとその噂が広まり、通常なら投資に縁のなかったような一般市民までもが取引に参加し、チューリップの球根の価格は高騰しました。この投資には、あらゆる階層の人々が参加したといわれ、オランダ国内だけでなく外国からも大量の資金が流入しました。オランダ中のあらゆる都市に取引所が開設され、小さな町では酒場で取引が行われました。
まだ実物の存在しない球根が取引され、転売を繰り返して値上がりし続けました。球根の価格が上昇するとともにあらゆる物価もあがりました。ピーク時には、球根一つが現在の価値で500万円以上ともいわれており、「新しい馬車1台・芦毛の馬2頭・そして馬具一式」と交換可能なほどだったという異常な価格となりました。
1637年に、突然バブルは崩壊しました。永遠に上がり続けると思われていた球根の価格が暴落し、全く買い手がつかなくなります。このバブル崩壊で多くの人が破産しましたが、その理由はレバレッジをかけていたためです。レバレッジとは「てこ」のことですが、この時は多くの人が資産を担保に借金をして取引していました。
バブル崩壊の余波
バブル崩壊後は、(その後のバブルでもおなじみの)訴訟や避難合戦、犯人探しが行われたものの、弾けたバブルは元には戻りませんでした。富の集中で繁栄を極めたオランダの都市は、突如として一文無しの人や破産者であふれかえりました。バブルの崩壊はオランダの経済に深刻なダメージを与え、長期に渡る不況がもたらされました。このバブルをきっかけに、金融の中心がオランダからイギリスへと移ったともいわれています。
このチューリップ・バブルによりオランダにはチューリップを愛する文化が根付き、現在でもオランダはチューリップの国として知られています。