古代中国の富豪たちに経済を学ぶ!史記・貨殖列伝より太公望と計然

万里の長城 マネー

古代中国には、己の能力と努力によって王侯貴族に匹敵する権力をもつに至った実業家たちがいました。特別な地位や財産を持たなかった彼らは、どのようにして王侯もひれ伏すほどの財を築いたのでしょうか。史記に記された彼らのエピソードから学びたいと思います。

史記は中国の誇る古典であり、日本にも多大な影響を及ぼし続けている歴史書です。司馬遷によって著された史記には、国家の歴史や皇帝をはじめとする政治を動かした人たちの伝記などに加え、一般民衆の伝記もあることが特徴です。

司馬遷の肖像画

司馬遷

その中に、知恵や勤勉で財産を築いた富豪たちの伝記があります。それが「貨殖列伝」です。ここでは、貨殖列伝にその名を残す古代中国の富豪のエピソードをご紹介します。現代を生きる我々にも参考になる考えがたくさんあります。

史記・貨殖列伝より太公望と計然

斉を興した太公望

夕暮れに釣りをする人

呂尚(りょ しょう)は、紀元前11世紀ごろの古代中国・周の軍師、後に斉の始祖。一般には太公望(たいこうぼう)という呼び名で知られ、釣りをしていた逸話から、日本ではしばしば釣り師の代名詞として使われる。

太公望が任された斉は塩分の多い湿地で住民が少なかったそうです。そこで太公望は女性の仕事を勧めて工芸の技巧を極めて、塩や魚を輸出して取引を盛んにしました。すると、人や物が集まり、まるで車輪のスポークのように集まりました。そして、斉の女性たちが作った着物は冠から履物まで広く天下に普及しました。斉が富強なので、他の国々の諸侯はみな襟元を正して敬って訪れました。

越を強大な国に導いた計然

船

越の王である句践に重用された計然は、王に経済政策を進言したところ、王はそれを実施し、越は五覇の一と称えられるほどになりました。計然の考えは、現代においても色あせません。以下にその言葉を抜粋します。

戦争のあることがわかれば、防備を固めなくてはならず、時の必要があれば、用いるものがわかるはずで、この二つが明らかなら、万貨の情態が観察できるのです。

時勢をよく観察することで、今後どのようなものが必要になるかを判断することができるはずです。常に時流を見極め、それに応じて行動できれば成功間違いなしです。全部成功するのは難しいにしても、五分五分で当たれば十分だと思いませんか?10回に1回しか当たらなくても、宝くじよりはるかに素晴らしい確率です。

旱魃の時にこそあらかじめ船を買い集め、洪水の時にこそあらかじめ車を買い集めるのが、物の道理であります。

旱魃の時は川や湖が干上がるので船の必要がなくなり、反対に陸地で用いる車が必要になります。すると船の値段はタダ同然となるので、旱魃のときに船を買い集めます。 洪水になり水が増えると誰もが船を求めるので、船の値は跳ね上がります。一方で、需要の減る車の値は下落するので、洪水のときに車を買い集めます。これらをうまく実行できると、安く買うことができます。

売価を公平にして物価を適正にし、関市を経て流通する物資を乏しくないようにするのが、国を治める常道です。

これこそまさに現代の国家運営でも用いられる考え方で、経済の基本となる考えです。売価を公平にするために独占禁止法などがあり、 物資を豊富に供給するために、国は様々な施策をしています。

蓄積の道は、なるべく完全な品物を手に入れるとともに、永く手元に置くものではありません。早く物資を交易し、腐敗したりいたみやすい物を貯めておいてはいけません。また、高価なものを蓄えておくのもいけません。

中国人が商売上手であるという評判を勝ち得ているのは、数千年に渡るこのような経済哲学の伝統があるからかもしれません。いわれてみれば当然ですが、商売に関わるならぜひ心に留めておきたい考えです。

物資の過不足を考えれば、物価の高低はわかるもので、騰貴の頂点に達すれば、やがて必ず下落し、下落の極点に達すれば、やがて必ず騰貴するものです。だから高いときには、糞土を捨てるように惜しみなく売り出し、やすいときには、珠玉を求めるように惜しんで買い入れ、物貨と金銭を流れる水のように流通させるのがよいのです。

計然のこの言葉は、バブルは起きるものだと言っているように思えます。また、景気には波があるものだから、それを見極めよと言っているようです。とはいえ、これがなかなか難しいものです。景気が上り調子のときに下落を考えたり、反対に不景気のときに好況になることを考えて取引するのは至難の業です。

計然の言葉を読むと彼の哲学がぼんやりと見えてきます。計然は、物資や金銭を貯めこむものではなく、流水のように流通させるべきだと考えていたようです。これは彼の特徴の一つではないでしょうか。ほとんどの場合、利益は貯めこむものだと考えている人のほうが多いように感じます。

まとめ

現代の経済を取り巻く環境は、司馬遷が史記を著した時代、太公望や計然が生きた時代よりも複雑になっています。しかし、太公望や計然の基本的な考え方は現在でも通用するものだと思います。お金のあるときもないときも、経済の道理を忘れないようにしたいものです。

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