コーヒーと角砂糖

行動経済学でわかった人間の不合理な5つの行動

行動経済学によると、人間の行動は必ずしも合理的とは限りません。それどころか、不合理とさえいえるものだったのです。そんな人間の経済行動についての第一人者である、デューク大学のダン・アリエリー教授による著書「予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 」から、いくつかの不合理な行動を紹介します。

人間の不合理な5つの行動

選択肢

選択肢が3つあると、大抵の人が真ん中を選ぶ。

人間は、絶対的な判断基準というものを持っていません。必ず、他のものと比較し、相対的に判断します。例えば、同じ商品(テレビなど)で価格や性能が異なる3つがあった場合、中間の価格と性能のものを選ぶことが多くなります。これは、自分にぴったりなテレビを判断する基準が存在しないためです。自分の中に基準がないので、似たようなものを比較して選択します。

レストランのメニュー

値の張るメイン料理をメニューに載せると、たとえそれを注文する人がいなくても、レストラン全体の収入が増える。

先ほどの「選択肢が3つあると、大抵の人が真ん中を選ぶ」という話と通じますが、人は最高額のものも最低額のものも選びにくい傾向があります。したがって、最高値の水準を上げると真ん中の水準も上がるので、より高い料理が注文されるようになります。結果として、レストランの収入が増えることになります。

レストランに行った際は、誰も頼まなそうな高価な料理がメニューに掲載されていないか、チェックしてみるとおもしろいかもしれません。

わかっているつもり

わたしたちは自分が的確ではっきりした選好をもつものと信じているが、実際には、自分の望みが何かわかっているつもりでいるにすぎない。

わたしたちが自分の好みだと思っているものは、本当はちょっとした偶然に過ぎないのかもしれません。例えば、人間は初めの接触や選択に左右されることがわかっています。はじめに青色のものを選択して失敗しなかったから、また青色の選択するといった繰り返しで、青色が好きだと思っているだけかもしれません。

また、本にはスターバックスの例も紹介されます。スターバックスのコーヒーは割高ですが、一度購入するとそれがコーヒーの価格の新しい指標になります。高いと感じたコーヒーも、二度目に買うときはそれほど感じません。コーヒーにそれだけ支払うのが妥当だと感じてくると、コーヒーのサイズを大きくしたり、別のメニューを頼むのも合理的に思えてきます。もっと安いコーヒーでもいいと考えてもいいはずですし、他のものに出費してもいいはずです。しかし、こうして何度も同じ決断をすることで、それが自分の望むことだと考えるようになります。

外食

誰かと外食する場合、自分が何も支払わないとき(無料!)もっとも幸福度が高い。

「もっとも幸福度が高いのはごちそうしてもらうことだ」というのはなんとなくわかります。しかし、実は100円でも支払わなくてはならないと、社会科学において「出費の痛み」といわれる苦痛が生じます。そして、支払う金額が100円増えるごとに感じる苦痛は小さくなっていきます。はじめの100円がもっとも苦痛なのです。なので、誰かにおごるときは全額支払った方が相手を幸福にできるということです。

しばしば、男女で食事をしたときの支払いはどうするべきか、ということが議論になります。行動経済学による正解は、どちらか(ほとんどは男性かもしれない)が、全額支払うということです。それがもっとも相手の満足度を高める方法です。例えば5,000円のうち1,000円だけ女性に支払ってもらうことにした場合、男性は太っ腹なことをしたと考えますが、女性の満足度は低めです。どうせなら、全額支払った方が女性を満足させることができます。本当に大切な相手なら、男性はそうした方が良いでしょう。もしも全額支払ってくれない男性がいたら、女性にその価値はないと判断したということでしょう。

2つの世界

わたしたちは2つの世界に住んでいる。

ここでいう2つの世界とは、社会規範が優勢な世界と市場規範が優勢な世界です。社会規範の世界は、思いやりや助け合い、人とのつながりといったことが重要な世界です。この世界では、誰かが重い物を運ぶのを手伝う、誰かが落としたものを拾うといったことをしても、即座にお礼をする必要はありません。市場規範の世界は、相手から受け取ったらすぐに支払うことが要求されます。一見ギスギスしているように見えますが、支払ったものに見合ったものが手に入るという利点があります。

人間はこの2つの世界を混同すると、うまくいきません。例えば、親切にしてくれた人に料金の支払いを申し出たら、場合によっては相手は侮辱されたと感じます。また、無償でボランティアをしてもらう場合と少額のお金を支払って同じことをしてもらうという実験では、興味深い結果が示されています。無償なら進んで手伝う人がたくさんいましたが、少額の報酬がある場合は手伝う人が激減したのです。合理的に考えれば、手伝って少額の報酬をもらえた方が得です。

ここで重要なのが社会規範と市場規範です。無償の場合は人は社会規範によって行動しますが、報酬がある場合は市場規範によって行動します。したがって、労働に見合った対価ではないと判断した人は手伝うのを断るのです。社会規範を市場規範に変えるには、実際にお金のやり取りをしなくても、お金の話をするだけで十分だそうです。

社会規範による関係は、一度壊れると修復は困難です。また、社会規範の関係を一度でも市場規範の関係にしてしまうと、元に戻すことはできません。

まとめ

人間は一般的に考えられているように、合理的な判断に基づいて行動しているわけではないことが、行動経済学によって明らかになりました。しかし、その不合理な行動は予想できるものです。人間にはどのような不合理な面があるのかを理解することによって、注意して行動できます。さらに詳しく人間の不合理な行動や行動経済学について知りたい場合は、ぜひダン・アリエリー教授の著書やTEDトークを参照してください。